2022(令和4)年【改正】 これだけは知っておきたい法改正 育児介護休業法
今回は『令和3年法律第58号』に基づいて、育児休業改正内容の概要を説明したいと思います。
少子高齢化と働き方改革を背景に、出産・育児による離職を防ぎ、仕事と育児を両立し、男女間の育児休業取得率の改善を目的として育児休業制度が改正されています。育児休業制度は、他の女性保護規定を含めると複雑な制度といえ、今回の改正でも就業規則、労使協定の改定を伴う事業所が多くあると思います。制度の整備が必要となると同時に使用者と従業員とのコミュニケーション施策がとても重要な制度と言えます。
確かに育児休業制度は複雑ですよね。ちゃんとみんなのサポートができるか不安です……。
6つの改正内容
法律 | 施行日 | NO | タイトル |
育児介護休業法 | 令和4(2022)年4月1日 | 1 | 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 |
2 | 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・意向確認の措置の義務付け | ||
令和4(2022)年10月1日 | 3 | 育児休業の分割取得 | |
4 | 『産後パパ育休』の創設 | ||
令和5(2023)年4月1日 | 5 | 育児休業の取得の状況の公表義務付け | |
雇用保険法 | 令和4(2022)年10月1日 | 6 | 育児休業給付に関する所要の規定の整備 |
まずは概要を押さえましょう。育児介護休業法、雇用保険法の2つの法律に関する改正があり、それぞれ施行日に違いがあることに注意が必要ですね。
それぞれNO1~6までありますが、今回は1~4を紹介します。
NO1は有期雇用労働者に特定されている点に注意してください。
NO5の取得状況の公表義務付けは令和5年に施行となり、従業員数1000人以上の企業が対象となります。
わたしは1000人未満の会社なので、まずはNO1~4をちゃんと把握したほうがよさそうですね。
そのとおりです。では、具体的な内容を説明していきますね。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和【2022(令和4)年4月1日~】
~2022(令和4)年3月31日 | 2022(令和4)年4月1日~ | ||
育児 | 1 | 引続き雇用された期間が1年以上あること | 削除 |
2 | 1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと | 1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと | |
介護 | 1 | 引続き雇用された期間が1年以上あること | 削除 |
2 | 介護休業予定日から93日経過日から6カ月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない | 介護休業予定日から93日経過日から6カ月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない |
まずは『有期雇用労働者』の要件に係る法改正であることに注意が必要です。
そして、育児休業、介護休業共に『1』の要件が削除され、『2』のみを取得要件としています。
ただし、育児介護休業法第6条には労使協定で、下記内容に該当する場合の育児休業をすることができないものとすることができます。
1.当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
2.前号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令定めるもの
とされています。
ということは、まずは育児介護休業規定と労使協定を確認してみる必要がありそうですね。
そのとおりです。とくに就業規則に有期雇用労働者の適応について定めている場合は、その文言には注意が必要ですね。
①育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び②妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け【2022(令和4)年4月1日~】
タイトルが長いですが、ポイントは以下2点です。
①育児休業を取得しやすい雇用環境整備
②妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
①、②ともにまずは具体的な内容に踏み込む前に留意事項を確認しましょう。
下記厚生労働省のガイドラインが参考となります。
■ この養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(令和3年9月30日号外厚生労働省告示第365号(令和4年4月1日)
▶ 雇用環境整備の留意事項
- 雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、短期はもとより一カ月以上の長期の休業の取得を希望する労働者が希望するとおりの機関の休業を申出取得できるよう配慮すること
- 雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、可能な限り、複数の措置を行うことが望ましい
▶ 個別周知・意向確認措置の留意事項
- 育児休業に関する制度を知らせる措置及び育児休業申出に係る労働者の意向を確認するための措置は、労働者による育児休業申出が円滑に行われるようにすることを目的とするものであることから、取得を控えさせるような形での個別周知及び意向確認の措置の実施は法第21条1項(育児休業等に関する定めの周知等の措置)の措置の実施とは認められないものである。
- 育児休業申出に係る労働者の意向を確認するための措置については、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけをおこなえばよいものである。
なるほどいろいろ配慮することが多そうですね
では、少し具体的な内容を見ていきましょう。
■ 雇用環境整備(事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません)
- 研修の実施
- 相談体制の整備(相談窓口の設置等)
- 自社従業員の取得事例の収集・提供
- 育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
■ 個別周知事項
- 育児休業制度に関する事項
- 育児休業の申出先
- 育児休業給付に関する事項
- 育児休業期間の社会保険料の取扱い
■ 個別周知・意向確認の方法
- 面談
- 書面交付
- FAX
- 電子メール等
個別周知、意向の確認は、本人の妊娠・出産だけでなく、配偶者が妊娠・出産した男性社員からの申出があった場合にもおこなわなければならないことに注意が必要です。
育児休業の分割取得【2022(令和4)年10月1日~】
~2022(令和4)年9月30日 | 2022(令和4)年10月1日~ | ||
適応制度 | 育休制度(子が1歳まで) | 育休制度(子が一歳まで) | 産後パパ育休(子が生まれて8週間までの期間) |
分割取得 | 原則分割取得不可 | 分割し、2回取得できる | 分割し、2回取得できる |
申出 | 分割し、それぞれに申出できる | 取得時にまとめて申出が必要 |
ポイントは10月1日施行という点と、分割には申出が必要であることですね。
『産後パパ育休』は取得時にまとめて申出が必要となることに注意が必要です。
『産後パパ育休』(出生時育児休業)の創設【2022(令和4)年10月1日~】
『産後パパ育休』は、男性社員がより育児に参加できるよう子の出生時から4週間の育児休暇がとれる制度です。
出産をする女性については、労働基準法の産前産後の休暇があります。
労働基準法65条2項【産後休業】において『使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない』とされています。
そして、子が1歳になるまでの休業を【育児休業】として育児介護休業法が規定しています。
男性社員はというと、育児介護休業法の子の1歳になるまでの休業の適応であるため、出産日の翌日~子が1歳になるまでの育児休業を取得することとなります。
育児休業は原則として当該出生した子について1回限りの取得なので、仕事と育児とのバランスをとるのが難しく育児休業がとりにくい状況になります。
そこで今までは『パパ特例』として出生後8週間以内に育児休業を取った男性はその後、再度子が一歳になるまで育児休業を取得できることとしていました。
そして2022年10月1日から、育児介護休業法に基づき『産後パパ育休』として、男性社員は産後8週間の期間において、4週間(2回の分割が可能)育児休業を取ることができるようになりました。
では、その概要をご説明いたします。
男性社員も産後8週間の期間に休暇がとれるのにわざわざ産後パパ育休を創設するんですね?
そうですね、ただ今後は『パパ特例』か、『産後パパ育休』を選択することができます。
『産後パパ育休』のメリットは分割を含めて理解するといいでしょう。
産後パパ育休は、8週間のうち4週間を休暇期間としています。
分割取得することができれば育児をするうえで仕事とのバランスがとりやすくなるでしょう。
産後パパ育休(出生時育児休業) | |
対象期間 | 子の出生後8週間以内に |
取得可能期間 | 4週間 |
分割取得 | 分割して2回取得可能 |
申出期間 | 原則:休業2週間前まで |
休業中の就業 | 就業可能 |
休業中の就業というのは、育休中に出社するっていうことですよね。わざわざ記載があるってことは本来就業してはいけないってことなんですね。
その通りです。育児休業は労働者の権利であって、その期間の労務提供義務を消滅させる制度であることから、育児休業中は就業しないことが原則であるとしています。なのでガイドラインでは、産後パパ育休期間中の就業については、事業主から労働者に対して就業可能日等の申出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いがなされてはならないものとしています。就業を許可する場合は労使間でしっかりと合意を取り合うようにしましょう。
下記は、育児休業の全体像になります。育児休業期間の分割が可能になるため、夫婦間でのスケジュールの設定、仕事と育児とのバランスのとり方が容易になると考えられるため、男性の育児休業取得率が増えることが期待できます。
まとめ
育児休業の取得のしやすさと利便性を考えた法改正ではありますが、女性保護の規定や育児休業制度の延長制度などを含めるとかなり複雑な制度となるため、就業規則の改定、育児介護休業規定の見直しをすると同時に申出等の手続を確認しておく必要があります。
今回の法改正を除いて注意すべき事項は以下のようなものがあります。
・妊産婦の保護規定、子の看護休暇
・育児休業制度の延長
・育児休業に関わる保険給付
・育児休業期間中の社会保険料の免除、養育特例、休業後の終了時改定
・両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
うわあ、大変ですね。法改正だけでも大変なのに。
そうですね、今後も育児休業に関するテーマを取り上げて解説するようにしますね。
わたしも常に情報をブラッシュアップしておかないと、はは……。